待乳山聖天様のおみくじ(観音くじ・元三大師くじ)の研究

お友達にも教えてあげてください!

CHAZZ先生にお勧めいただいたご縁もあって、最近、月イチで待乳山の聖天さま(当ページ写真・wikipediaより引用)に参詣しています。
本堂で勤行していると、頭がシャープになる感じがして、すごくいいですね。その待乳山聖天のおみくじについての裏話(?)です。




待乳山聖天の「観音くじ」には易卦がある?

さて、待乳山さんにお参りしたことのある方ならご存知かと思うのですが、本堂の下陣脇で「観音くじ」というおみくじを引くことができます。100円を賽銭箱に入れて、筮筒のようなものから竹の棒を振り出して、棒に書かれた番号の紙を後ろの小棚から自分で持ってくる、という形式です。

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その紙には漢詩が書いてありまして、一応「吉」「凶」といった判定や解釈も書いてはあるのですが、漢詩が難解で、それだけでは正直何が言いたいのかイマイチよくわかりません。
そこで、筮筒脇に置いてある「観音籤」と書かれた解説書を読む…のですが、何とこの解説書、おみくじの番号に易卦を割り振ってあるのです。しかも、易卦は合計で64卦しかないのですが、このおみくじは1番から100番まであります。
一体このおみくじは何?と思われた方のために、色々調べましたのでちょこっと解説させていただきます(笑)

「観音くじ」は中国のおみくじだった!?

待乳山さんのおみくじは奇異なものでも、異端なものでもありません。これは「観音くじ」もしくは「元三大師くじ」と呼ばれ、仏閣でのおみくじとしてはポピュラーなものなのです。
元をたどれば、中国で流行していた「天竺霊籤」と呼ばれるおみくじが日本に輸入され、紆余曲折を経て天台宗の高僧・良源(右写真・wikipediaより引用)が作ったと言われるに至ったもので、「観音くじ」という呼び名のほか、良源の通称である「元三大師」から「元三大師くじ」とも呼ばれています。

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※「天竺霊籤」が起源なのではなく、良源が観音さまに祈念して偈文を授かったものが起源だ、という主張もあります。
ついでですので、そのあたりを少し詳しく補足します。
このおみくじを広めたのは、徳川家康に仕えた高僧・天海大僧正だと言われています。天海は夢の中で崇敬する良源に出会い、「おみくじセットが戸隠に隠してあるので、万民救済のため探し出して広めるように」と言われ、さっそく戸隠に人を派遣してこれを持ち帰ったそうです。
この持ち帰った「おみくじセット」が「天竺霊籤」だったのではないか、という話なのですが、このあたりは早大院で東洋美術史を修めた中村公一先生の「一番大吉!―おみくじのフォークロア (あじあブックス)」に詳しいので、興味のある方は読んでみてください。

どうして解説書に易卦が振ってあるのか

先述のように、この「観音くじ」は中国の「天竺霊籤」と呼ばれるものがルーツで、江戸初期に天海大僧正によって広められたものです。しかし、おみくじの文言だけでは当時の人々も意味がイマイチ解らなかったようで、解説書が多数市販されるようになります。
※先述の中村先生の書によると、江戸初期のおみくじは、寺社で数字の書かれた竹棒を引くだけのもので、結果の書かれた紙はもらえなかったそうです。そこで、自分で持参した本で、出た数字に対応するお告げを調べる…というスタイルになったため、おみくじの解説書が多数出た、という事情もあったようです。
要するに、そういった解説書の一つに易卦を用いておみくじを説明したものがあり、それが待乳山さんに備え付けられていた、というのが真相でしょう。ちなみに、待乳山さんの解説書はボロボロで表紙が無いためよくわからないのですが、この解説書は江守録輔氏の『周易対照観音籤新釈』(昭和7年刊)ではないかと思われます。

凶が全部、凶ではない!?

カンのいい方はここでお解りかと思いますが、解説書が何種類もあるということは、「観音くじ」に書かれた漢詩1つに対して、吉なのか凶なのか意見が分かれていると言うことです。漢詩を前半と後半に分けて、時間の流れに合わせて判断するという技法(?)もあったようで、吉なのか凶なのか解りにくい漢詩や、前半と後半で雰囲気大きく異なる漢詩などは、解釈が入り乱れて相当カオスなことになっているようです。

おみくじの解釈ってどうやるの!?

「じゃあ、俺の引いたこの61番は一体何なんだ!」
といったお声をいただきそうですが、実に頭の痛いところです。
あくまで「引いたお寺に備え付けられている本」や「引いたお寺の紙に書かれた吉凶」を信じるか、自分で漢詩の解釈をするかというのに落ち着くかと思うのですが、個人的には後者の方がいいかなあ、と思います。
まるで周易を高島流で解釈するようなおみくじの引き方ですが、もともと観音くじは「ご真言を千回と観音経を3回唱えた後に引く」「僧侶に観音経を読経してもらって引く」という気合いの入ったものだったらしく、「験」の出るときは、問いたい内容がおみくじの中の漢詩に反映されることが多いと思います。こういう時は、おみくじに書かれた吉凶よりも、漢詩の内容を参考にした方がいいのかもしれません。
ここから考えると、おみくじを引く前に聖天さまの勤行をしっかりと果たしたり、観音様のご真言を唱えたり、観音経を読んでから引くと「験」が出やすいのかもしれませんね。
しかしまあ、私が女運を問うて引いた63番「凶 ~佳人の心は疎ましくなっていく~」といったようなものは、もう考えるまでもなく凶、ですね(笑)