占いは統計学だから当たるのか?
大久保占い研究室の田中です。
よく「占いは統計学ですから」という占い師さんがいますが、はたして本当に統計学なのでしょうか?
実は、占いは統計学で出来ているものではないのです。統計学で占いができるという根拠もありません。
残念ながら、多くは占い師自身が統計学に無知か、統計学の名を借りて、何も知らない人に信頼感を植え付けようとしているだけなのです。
このページでは、占いが統計学をもとに作られている…という誤解を解きほぐすと同時に、占いが(残念ながら現状では)統計学ではありえないという理由を、大学一年生の統計学のオリエンテーション程度の簡単さでお伝えしたいと思います。
また文末に、統計学のテクニックを使って占いを当てたように見せる方法もまとめておきます。占いと統計学の関係を考える一助になればと思います。
統計学っぽいだけで根拠はありません
繰り返しになりますが、結論から言うと、占いは統計学ではありません。統計学っぽいだけで、統計学であるという根拠はありません。
国内のMBAで統計学を2年やった程度の私ですら、統計学というにはさすがに無理があるよなぁ、と思います。
なぜかというと、占いのデータやプロセスを統計学の手法で扱うことは極めて難しく、またそういった研究も十分にはなされていないからです。
要するに、統計で扱えるほど、占いというものを数値化できていないのです。
以下、大学の統計学の講義の第一回目、みたいな内容になりますが、占いがどうして統計学でないのかを、やんわりと説明していきます。
統計や数学が苦手な方でも、何度か読めば理解できると思います。私自身が数学大嫌いなので!
統計学と占いが違うものであるという理由
統計解析をする際に最も大事なのが、データの量と、データの質の確保です。
そして集めたら集めたで、データを正しく加工・解析できているか、という大問題が控えています。
それぞれの問題について、まず質と量から考えていきましょう。
1.統計学にはなぜデータ量が必要なのか?
なぜデータの量が多くなければならないか。これはサンプリングされたデータが少ないと、結果にバラツキが大きくなるからです。
たとえば、「町内の人口の男女比を調べる」という場合、町民全員の性別を調べれば間違いありませんが(全数調査と呼びます)、「町民全員から2人ピックアップして調べます」ということになると、「この町には女しかいません!すばらしい町です!あれ、俺は男だよな…」というトンチンカンな結論になりかねません。
つまるところ、たかだか2人3人の鑑定から得た経験で「結婚の年齢を解き明かす方法がわかった!」と、理論が見つかったかのように判断することはできないということです。
こう言うと、「俺は今まで3万人は鑑定しているんだ!」と反応される、大御所の先生もいらっしゃるかと思います。
しかし、例えば「たくさん鑑定したから統計で結婚する日を当てられるようになった」という論を成り立たせるためには、まず「結婚の日を鑑定して、その後の経緯を確かめた」というケースが、最低でも50件は欲しいところです(50でも本当は少ないですね。200-300はほしいと思います)。
受けている相談内容は結婚の時期ばかりではないはずです。本当にそんなにデータ量を確保できるでしょうか?
そして、この量の問題をクリアできたとしても、さらに「データの質」が問われるのです。
2.占いで扱うデータの質の問題について
先ほどの話の続きですが、3万件のデータがあると言っても、データがあるだけでは意味がありません。
そのデータが正しい手法で集められたデータである必要があるのです。
例えばこれまた人口比の例で恐縮ですが、世界の宗教の信者さんの比率を調べます!という際に、意図的にイランだけで調査をしても正しい結果は出ないでしょう。
また、町内の男女比を調べるために、町にある女子校からサンプリング調査をしたら、結果はどうなるでしょうか。
この「まんべんなくサンプルを集める」というのは、占い師の実務から考えると、非常に難しいことだと思います。
例えば私の所に来られる鑑定のお客さんは、経済的に余裕のある人が多い、という偏り方をしています。なぜなら、鑑定料金が高いからです。
このお客さんたちの結婚運を占ったと仮定しましょう。おそらく、一般の人よりも結婚のハードルは相当に低いはずです。お金のある人が早く結婚するのは、これはもう各種の統計調査が明らかにしています。
なので、ここからサンプルを引っ張って「結婚の時期を当てる」「結婚できるかを当てる」「結婚相手がどういった人かを当てる」という理論を成り立たせたとしても、それは普遍的なものだとは言い難いでしょう。もともと結婚しやすい人を調べているだけですから…。
こういった問題をクリアして、普遍的にデータが取れたとしても、まだデータの定義の問題があります。
話をまたまた宗教の信者数に戻しますが、「どこそこの何パーセントは何教で、何パーセントが何教の信者か」という比率を調べるとなると、そもそも論として「信者の定義って何?」という大問題をクリアしなくてはなりません。
洗礼を受けたら信者なのか、神社にお参りしたら信者なのか…誰がどの基準です決めれば、納得がいく体裁になるのでしょうか。
「国内の宗教団体が発表している信者数を合計したら2億人になった」みたいな話はよく聞きますよね。
くどいようですが、統計解析をかけるためには、調査対象の属性を明確に定義して、幅広く、まんべんなくサンプルを集めなくてはなりません。
これを健康運の占いに当てはめると「病気をするっていうのはどの範囲からどの範囲まで?風邪とか深爪は病気に入るの?」といったような問題になるでしょうか。
結婚等の時期の占いにしても、結婚を決意した時期が出ているのか、結婚式の日が出ているのか、戸籍を換えた日が出ているのか…死期にしても、脳死はどう扱うのか…。
保険の数理調査なら「はい死にました、と医者が決めた日を使います」で済みますが、死期を当てる占いでは、そんなわけにもいかないでしょう。
3.占いの分析手法そのものも数式化が難しい
さきほど「3万人鑑定したから統計的にわかってるんだ」という占い師の例を出しましたが、ここまで見てきたように、統計を使った占いを名乗るのであれば、3万件のデータはバラツキなく正しい手法でサンプリングされ、属性の定義が明確になされ、解析に用いるデータ量は統計解析に耐えるサイズでなくてはなりません。本当にできるのでしょうか?
正直かなりしんどいと思うのですが、そのうえ分析・解析手法そのものにも課題があります。
当たり前の話ですが、統計分析を行うのであれば、全てのデータに、全て同じ占法を使って、全て同じロジックで、全て機械的に鑑定を進めた結果として記録し続けなくてはなりません。
「○○さんだけ断易や人相も使って鑑定しました」ということは許されません。
データを集めている最中、その占い師さんは進歩しても、退歩してもいけないのです。果たして、実務上そんなことが可能でしょうか?
とはいえ、「データ自体の正しさ」という問題をクリアしていれば、バースデータと(当てたい事象をはっきりと追跡調査した)顧客データを3万件使って、四柱推命の特定のロジックで、特定の事象が起こる年を、前後xヶ月の範疇まで絞ることができた…という作業は可能かもしれません。
これは逆に是非、沢山の鑑定をこなしている先生方にチャレンジしてほしい課題だと思います。
しかしながら、解析のロジックもそのものを「四柱推命では日干が身強で…」みたいな複雑なものにするのであれば、その場合は透派なみにシステマチックに力量判断のロジックを作るところから始めねばならず、またデータの質という点からは、三柱推命と四柱推命は厳然と区別する必要がありそうです。
なので、使えて日干支だとか、月令が財もしくは官であるだとか、鑑定ロジックそのものが低い次元に収まりそうではあります。これはこれで、実務的ではありませんね。
よくて「占いは経験則」くらいでは?
占いを統計学として扱うのは非常にハードルが高いということを、ここまで読まれた方はご理解いただけたのではないかと思います。
占いは統計学ではなく、せいぜい「統計的なもの」「経験則」と言うのが精一杯でしょう。
過去には「統計でわかる四柱推命」的な本が出ていたりもしましたが、統計学を標榜して、なおかつキチンとした調査・分析を行っているという本や研究者は、小生の知る限りにおいてはありません。
西洋占星術では統計的なアプローチが試行錯誤されている
ただし、西洋占星術では統計によるアプローチが古くから行われており、いまだ実践に耐えうる成果は出ていないと思いますが、考え方自体は東洋占術より一歩進んでいます。たとえばヨーロッパでは何世紀も前から
「惑星の配置が地球上の微粒物質に影響するのか→おっ影響してる!天体は人体に影響がある!→ということは占星術も影響がある!」
といった研究がされていますし、現在では定量的なアプローチを探る占い師さんもいます。このあたりは東洋占術家の一人として、西洋占術家の皆さんの努力を見習いたいところです。
統計学のテクニックを駆使して占いが当たるように見せかける方法
ここまで「占いは統計学ではない」ということを力説してきましたが、統計を利用して占いをせずに「何かを当てる」方法はあります。こういったものが裏返しになって「占いは統計学である」と呼ばれる根拠になっているかもしれないので、こちらもざっとご紹介します。
たとえば東京都内だと、平均初婚年齢は29~30歳といったところだと思います。また結婚後5年間の離婚率は5%以下だというデータもあります。つまるところ、鑑定客の年齢を見れば、何パーセントくらいが未婚かがわかります。
もしくは単刀直入に「年齢別未婚率」というデータもあります。たとえば「せんだい男女共同参画財団」さんの資料を見ると、30-34歳の女性は37.4%、男性は41.3%が未婚であるとわかります。これくらいの年代の人に、あなたは未婚ですねと尋ね歩けば、だいたい40%くらいの確率で「そうです当たってます」と言われるわけです。
とはいえ的中率が50%を切っていては仕方がありませんので、これにプラスしてお客さんが指輪をつけているかをチェックしましょう。こうすれば、かなりの確率で、未婚、離婚、既婚、死別その他を当てられるのではないでしょうか。
そして占い師が「恋愛に強い」「出会いに強い」という名目でメディアに出たりしていたら、集まってくる顧客のニーズがそれに集中していると考えられますから、70%だとか80%だとか、とんでもない確率になっているものと思われます。
(これだと厳密には統計ではなく、経験則の積み重ねが統計的に見えているというだけですが、統計データを利用すれば悪い意味で有意義な営業ができる、という意味でお読みください)
念のため書いておきますが、ここでは「既婚か未婚か」という超単純な当て物を例に引きましたので、これを実際の現場でやっている占い師さんは少ないだろうと思います。とはいえ自分の客層や鑑定の価格、メディアでどう取り上げられているかなど、統計的手法、もっと正確に言えば経験則的な学びも加えて、お客さんの心の中を読む方法は、無数にあると言えるでしょう。
そのほかにも平均離婚率、子供の数の平均、不妊治療を受けるカップルの割合や年齢別の成功率、各都道府県の所得の中央値、似たようなデータはいろいろと転がっていますので、創意工夫であれこれアタリをつけたり、顧客をグイッと引きつけることができるだろうと思います。
例えば、現代ではカップルの1/7から1/10が不妊治療を受ける必要があるのだそうです。であれば、「これから結婚するのですが」と相談に来たカップルに、 片っ端から「病院に行ってください」とアドバイスすれば、そのうちの10-14%は「先生の鑑定が当たって、事前に問題を発見することができた」と占い師を尊敬するようになるでしょう。
こうなると、水子供養オプションの販売やらで客単価が跳ね上がり、「この先生は当たらないな」という客がリピートしなくなるマイナスを差し引いても、収支が大きくプラスになる可能性があります。コールドリーディングでツボやらを売りつけるインチキ占い師は、こういったトリックを通じて、期待値を上げる方法を体験的にマスターしたのかもしれません。
占いと統計学はこれから楽しみな分野
昨今はインターネットで簡単にデータを集められ、パソコンで本格的な統計解析が可能になっているわけですから、占いと統計学は無関係な領域というよりも、楽しみな今後のテーマという気がします。
また昨今はAIや機械学習の進歩が著しく、インターネット経由で生年月日やライフイベントのビッグデータを蓄積して、ディープラーニングで天体位置との関係性を洗い出していくなど、いかにも研究しやすそうな課題だと思います。
というわけで「占いは統計学」と言う占い師を見つけたら、ちょっと統計に対する意識が薄いか、もしくは本当に凄い統計学の素養がある実践家が大変な発見をしているか、どちらかだとお考えください。
私自身はぶっちゃけ、占いは統計学ではなくアートだと思っています。とはいえ、一人の占い好きとして、統計学的手法やディープラーニングから出発した占いが現れる日も楽しみにしています!
コメント
占いは統計だってのは、占い師を否定する側のセリフだと思ってました。占い師が、統計だと主張するとは思わなかったです。
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