占いは統計学ではない/統計学=占いが嘘である理由

著者・田中(あらいちゅー)の自画像田中(あらいちゅー), 馬主で大家で占い師田中(あらいちゅー) @araichuu Twitter

筆者について:本記事の筆者・田中(あらいちゅー)は、長年にわたり占術を実地で扱ってきた占い師であると同時に、競馬(馬主)不動産賃貸業(大家)でデータ解析、そして占いに取り組んでいる実務家でもあります。また立教大学大学院(経営管理学)でMBAを取得し、統計学の基礎も学んでいます。占いと統計学の両方を現場で扱った経験から、『占いは統計学』という主張がなぜ成立しないのか、根拠を示して解説します。

占いが統計学で出来ているって本当?

占いと統計学の研究

占いのことを「統計学から成り立っている」と言う占い師さんがたくさんいらっしゃいますが、占いは統計学ではありません。また同時に、統計学を用いて占いができるという根拠もありません。

「生年月日を用いた統計学だから当たるのだ」という占い師さんは、残念ながら嘘をついているか、統計学に対して無知なだけです。このページでは、占いは統計学ではないという根拠を、中学生~高校生レベルでもわかるよう、やさしく解説します。

また文末に、統計学のテクニックを使って占いを当てたように見せる方法(統計を使った嘘)もまとめておきます。占いと統計学の関係を考える一助になればと思います。

統計や数学が苦手な方でも、ゆっくり読めば理解できると思います。大丈夫です。書いている私自身が数学も、統計学も、苦手でしたので!

「占いは統計学」という主張の歴史的背景

1990 年代のテレビ番組で「占いは統計学」と説明する占い師のイメージ

「占いは統計学である」というフレーズが広く使われるようになったのは、占いが日本のメディアで本格的に注目を集めた 1990年代以降だと言われています。細木数子さんが六星占術をテレビで大々的に展開した時期と、ちょうど重なります。

当時のテレビ番組では、占い師たちが「科学的に」「統計的に」と説明することで、視聴者の信頼を得ようとしていました。占いはオカルトや非科学的なものとして敬遠されがちなため、「データに基づいている」という形で権威付けするのが、視聴者への訴求にはとても効率的だったのでしょう。テレビ以外のメディアでも同じような流れがあったのは、その証左とも言えるでしょう。

2000年代に入ると脳科学ブームが訪れ、「脳の仕組みから見ると占いには意味がある」「統計的な知見に基づく占術だ」という言説が広まりました。それに前後して「四柱推命は何千年ものデータの蓄積から生まれた統計学の一種」という説明が定番になっていきました。

2020年代の現在では、ChatGPTやGeminiといった生成AIが普及したことで、「AI×占い」「機械学習で占う」といった新しいバリエーションも生まれています。

しかし、どれだけ言葉の装いは変わっても、「統計学」「科学」「データ」といったキーワードで占いの信頼性を補強しようとする構図は、30年前から本質的に変わっていません。

つまり「占いは統計学である」という主張は、学問的な裏付けがあるものではなく、占いをビジネスとして成立させるためのマーケティング上のレトリックとして、歴史的に繰り返し用いられてきたものなのです。

占いが統計学であるというのは単なる宣伝手段

先述のように、占いは統計学であるという占い師が多数いますが、残念ながらその占い師たちは、統計学を知らないか、統計学の名を借りて、何も知らない人に信頼感を植え付けようとしているだけです。四柱推命でも、占星術でも、生年月日を使っていても、カードをめくっていても、占いは統計学ではありません。

なぜかというと、占いのデータやプロセスを統計学の手法で扱うことは極めて難しく、またそういった研究も十分にはなされていないからです。要するに、占いに登場するさまざまな要素が、統計学で扱えるほど数値化できていないのです。

多くは統計学の名前を宣伝に利用しているだけなので、統計学を標榜する占いや占い師には注意が必要です。よく言われるように「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」のです。

統計学=占いが嘘であるという理由

統計学とは、集めたデータを分析して、法則や有益な情報を得るための学問です。その一連の作業を統計解析と呼ぶことにします。

統計解析をする際に最も大事なのが、データの量と、データの質の確保です。正しい手法で、有意義なデータを、たくさんの集めなければ統計解析はできません。占いというのは構造的に、本質的に、これらを満たすのが難しいのです。これが、占いが統計学ではないという最大の理由です。

それぞれの問題について、まずデータの質と量という面から考えていきましょう。

1.統計学にはなぜデータ量が必要なのか?

統計学には、なぜデータの量が多くなければならないのでしょうか。これはデータが少ないと、結果にバラツキが大きくなるからです。

たとえば、「町内の人口の男女比を調べる」という場合、町民全員の性別を調べれば間違いありません(全数調査と呼びます)。

ところが「町民全員から2人ピックアップして調べます」ということになると、「この町には女しかいないようです!すばらしい町です!あれ、俺は男だよな…」というトンチンカンな結論になりかねません。しかもサンプルが少なければ少ないほど、トンチンカンな結果になる確率はかなり高くなります。

これでは信頼できる統計とは呼べませんし、統計学を活かしてもいませんね。むしろ「統計として無意味なことを統計学で証明した」という状態です。

では逆に、100万人の街で10万人を調べたならどうでしょうか。ここまでサンプルが多いと、全体にならしても信頼できそうな数字が得られると思います。

これを占いの話に置き換えてみましょう。たかだか2人3人の鑑定から得たデータでは、何らかの統計学的な理論が見つかったかのように判断することはできない、ということになります。当たり前ですね。

こう言うとなかには「俺は今までに3万人鑑定しているぞ!」という反論をする先生もいらっしゃるかと思いますが、鑑定人数が多いだけでは、残念ながらまだ統計解析とは呼べないのです。

例えば「たくさんの人を鑑定したから統計で結婚する日を当てられるようになった」という論を成り立たせるためには、まず「結婚の日がいつであるか占って、その後の経緯を確かめた」というケースが、最低でも50件は欲しいところです(50でも本当は少ないですね。200-300はほしいと思います)。

占い師の実務を考えると、受けている相談内容は結婚の時期ばかりではないはずです。また、きちんと相談者の行く末をトレースすることはできているのでしょうか。そもそも当たらなかった人は報告に来ないのではないですか。本当に、必要なデータ量を確保できているのでしょうか。バイアスや、偶然手に入ったデータに偏りは本当にないのでしょうか…?

2.占いで扱うデータの質の問題

データ量の問題をクリアできたとしても、次に「データの質」の問題が控えています。

先ほどの話の続きになりますが、仮に3万件の鑑定データがあると言っても、データがあるだけでは無意味なのです。それが「正しい手法で集められたデータ」でなければなりません。

これまた人口比の例で恐縮ですが、「世界の宗教の信者さんの比率を調べます!」という際に、イランだけで調査をしても正しい結果は出ないでしょう。また町内の男女比を調べるために、町にある女子校に赴いてサンプリング調査をしたら、結果はどうなるでしょうか。正しくデータを集めるというのは、統計学の屋台骨なのです。

正しい手法というと難しく聞こえますが、要するに「偏りなく、まんべんなくサンプルデータを集める」ということです。この「まんべんなく集める」というのは、占い師の実務から考えると、非常に難しいことだと思います。

例えば私の所ところに来られる鑑定のお客さんは、経済的に余裕のある人が多い、という偏り方をしています。なぜなら鑑定料金が高いからです。

このお客さんたちの結婚の年齢を占うと仮定しましょう。おそらく、一般の人よりも結婚できる可能性は高くなるし、その時期も早くなるはずです。お金のある人が早く結婚するのは当たり前のことですし、これは占い以前に各種の統計調査が明らかにしています。

なので、私が鑑定の実践データから大量のサンプルを引っ張って「結婚の時期を当てる」「結婚できるかを当てる」「結婚相手がどういった人かを当てる」という理論を成り立たせても、それは偏りのない、普遍的な、万人が使えるものだとは言い難いでしょう。だって、もともと結婚しやすい人を集めて、調べているだけなのですから…。

占いは統計学でなくアート

こういった偏りは鑑定料金だけではなく、鑑定する場所、鑑定に使う占い、占い師が男性か女性か、若いかそうでないかでも、発生すると考えられます。このように、まんべんなくというのは本当に難しいのです。

3.データの定義の問題

仮にまんべんなく、たくさんのデータが取れたとしても、占いの場合はまだ「データの定義」の問題があります。

話をまたまた宗教の信者数に戻しますが、仮に「日本人の何パーセントが仏教徒か」という数字を調べるとします。そうなると、そもそも論として「仏教徒の定義って何?」という大問題をクリアしなくてはなりません。

家に仏壇があれば信者なのか、お墓がお寺にあれば信者なのか。神社にお参りもしている場合は信者とみなすのか。クリスマスは祝ってもいいのかどうか。

統計解析をかけるためには、調査対象の属性を明確に定義して、幅広く、まんべんなくサンプルを集めなくてはなりません。占いで扱う事象の場合、誰がどの基準で定義を決めればいいのでしょうか?

これを健康運の占いに当てはめると「病気をするっていうのはどの範囲からどの範囲まで?」「風邪とか深爪は病気に入るの?」「水虫は?」といったような問題になるでしょう。一般の占い師が、これに即答するのは難しいと思います。

結婚の時期を占うにしても、結婚を決意した時期が出ているのか、プロポーズされた日が出ているのか、結婚式の日が出ているのか。もしくは戸籍を入れた日が出ているのか。死期を占うにしても、脳死はどう扱うのか、事故死と自然死は区別するのか。すべて決めなければなりません。

役所の調査なら入籍の日でよいですし、保険の数理調査なら医者が死亡診断書を書いた日で良いでしょう。しかし、人生というのはそんなに単純ではありません。

結婚の形も、亡くなる形も人それぞれで、お客さんの悩みも人それぞれです。占いというのはそもそも、個々人の悩みに寄り添うオーダーメイドなサービスのはずですよね。出発点からして、統計学で割り切れるものではないはずです。

4.占いの分析手法そのものも数式化が難しい

「3万人鑑定したから俺は統計学」という占い師の例え話を出しましたが、ここまで見てきたように、統計学を使った占いを名乗るのであれば、3万件のデータは正しい手法でサンプリングされ、属性の定義が明確になされ、解析に用いるデータ量は統計解析に耐えるサイズでなくてはなりません。そんなことが本当にできるのでしょうか?

正直、サンプルを準備する時点でかなりしんどいと思うのですが、そのうえ統計学の本体である、データの分析・解析手法そのものも課題として残っています。

「自分のは統計を用いた占いだ」と言うためには、全てのデータに対し、全て同じ占法を使って、機械的に鑑定を進めた結果を元に、何らかの結論を導かなければなりません。

「○○さんだけ人相も使いました」「たまたまオーラが見えました」「直感でわかりました」といったような、イレギュラーな要素を挟むことは許されないのです。

同じ占いを使い続けるにしても、データを集めている最中、その占い師さんは進歩しても、退歩しても、サービスしてもいけないのです。占い師の実務上で、そんなことが可能なのでしょうか?

カードを使った占いも統計学として成立させるのは難しい。

とはいえ、「データ自体の正しさ」「データの量」という問題をクリアしているのであれば、四柱推命や西洋占星術のロジックを色々と用いて、何らかの方程式を見つけ出すことは可能かもしれません。これは是非、沢山の鑑定をこなしている先生方にチャレンジしてほしい課題だと思います。

しかしながら、解析のロジックを「四柱推命では日干が身強で…」といった高度なレベルにするのであれば、システマチックな力量判断のロジックを作るところから始めねばなりません。またこの場合だと、三柱推命と四柱推命は厳然と区別する必要がありそうです。そして、顧客が申告してきた生年月日時は正しいのかという問題も出てきます。

こういった点を考えると、統計解析をするにしても、日干支を見るだとか、月令の通変星を見るだとか、鑑定ロジックそのものが低い次元に収まりそうではあります。これはこれで、占い師の立場からすると、実務的ではないように思います。

手相や人相を統計学で見るのはなおさら難しい

そして、占いの種類が違えばどうでしょうか。生年月日を使わない占いとして、すぐに思いつくのは手相や人相ですが、これらは統計学では判断がほぼ不可能な分野です。

なぜなら手相や人相では、手や顔の形状だけでなく「気血」と言われる微妙な色の違いやオーラを見る必要があるからです。オーラの有無や形をデータ化して、機械に読み込ませるのは至難の業でしょう。

これから何十年も経てば、ビッグデータとディープラーニング、AIで変化があるかもしれませんが、それはもう占いではないでしょう。

「占いは統計学」ではなく「占いは経験則」

ここまでお読みいただいて、「占いを統計学として扱うのは非常に難しい」ということを、大まかにご理解いただけたのではないかと思います。

占いは統計学ではなく、せいぜい「統計的なもの」「経験則」と言うのが精一杯でしょう。

過去には「統計でわかる四柱推命」のような本がいくつか出ていたりもしましたが、統計学を標榜して、なおかつキチンとした調査・分析を行って、実際の鑑定に耐えうる何かを生み出したい占い師は、私の知る限りにおいてはありません。

いくつか参考になりそうな本もご紹介いただいたのですが、占いとしてシンプルすぎたり、統計解析に耐えうるデータ量を持っていないものがほとんどでした。

西洋占星術では統計的なアプローチが試行錯誤されている

ただし、西洋占星術の世界では統計によるアプローチが古くから行われています。

いまだ実践(占い師としての営業)に耐えうる成果は出ていないと思いますが、考え方自体は東洋占術より一歩進んでいます。たとえばヨーロッパでは何世紀も前に、

「惑星の配置が地球上の微粒物質に影響するのか→おっ影響してる!天体は人体に影響がある!→ということは占星術も人体に影響があるのでは?」

といった研究がなされていますし、現在では定量的なアプローチを探る占い師さんも沢山います。なかでも経済占星術(株価の予測など)はデータが信頼できそうなので、面白い分野です。

占いが統計学であるという論文の蓄積はない

このように、占いが統計学であるという学術的な蓄積は少ないのですが、この分野の可能性を模索している研究者が(主に西洋占星術の界隈に)いるのは事実です。

このあたりは占い師の一人として、そのアカデミックな努力を見習いたいところです。いつの日か、占いが統計学であると肯定するか、もしくは統計学ではないと否定する論文が出てくると思いますし、その日をとても楽しみにしています。

統計学と生年月日を駆使しようとする四柱推命家もいる

そして東洋占術の世界にも、統計学を駆使して四柱推命学を解析しようという試みがあります。

生年月日というデータは(サバを読まれていない限りは)確かなので、統計学を用いてなにかを導き出す土台はあるのですが、やはり四柱推命のロジック自体が統計学と相性が悪く、残念ながら実用に耐えるものとは言えないようです。

そもそもですが、四柱推命が統計学で出来ているのであれば、生年月日を一定の数式に入れれば、誰もが同じ結果を得ることができるはずです。つまり、占い師による差はなくなっているはずです。現実はそうではありませんよね。

逆に、大阪の陽史明先生(故人)のように、統計学的手法で四柱推命の鑑定法を洗い直し、「サンプル数があまりにも少ないのでこの鑑定法は使えないのではないか」という、「刈り取り型」の活かし方をしている先生もいます。

占いを統計学的に(研究で)使う方法
占いは統計学ではないと断った上で、統計的アプローチを研究に活かす方法を紹介。陽史明先生の方局・会局への否定論、林巨征先生の表計算を使った方位術の効果測定、筆者のギャンブルでの勝ち負け記録、それぞれの実例を整理。

これは統計学で占いをしているわけではありませんが、統計学の発想を占いの研究や文献学のアプローチに用いている、面白い例だと思います。

統計学のテクニックを駆使したコールドリーディング

ここまで「占いは統計学ではない」ということを力説してきましたが、統計学を利用して占いをせずに「何かを当てる」方法はあります。つまり、統計学を用いたコールドリーディングです。

こういったものが裏返しになって「占いは統計学である」と呼ばれる根拠になっているかもしれないので、こちらもざっと手口をご紹介します。

初婚年齢の統計データを使う

無料で手に入る統計データを利用して、占いのような判断をしてみましょう。たとえば東京都内だと、平均初婚年齢は29~30歳というデータが出ると思います。また結婚後5年間の離婚率は5%以下だというデータもあります。つまり、鑑定客の年齢を見れば、何パーセントくらいが未婚かがわかります。

年齢別未婚率の統計データを使う

もしくは単刀直入に「年齢別未婚率」というデータもあります。たとえば私の手元のデータだと、とある県での30-34歳の女性は37.4%が未婚で、同じく男性は41.3%が未婚であるとわかります。

これくらいの年代の人に、あなたは未婚ですねと尋ね歩けば、だいたい40%くらいの確率で「そうです当たっています」と言われるわけです。逆に言えば「既婚ですね」といえば、60%当たる占い師になっているわけです。

統計データに加えて相談者の外見を利用すると…?

この統計データにプラスして、お客さんが指輪をつけているかをチェックしましょう。こうすれば、かなりの確率で、未婚、離婚、既婚、死別その他を当てられるのではないでしょうか。

そして占い師が「恋愛に強い」「出会いに強い」という名目でメディアに出たりしていたら、集まってくる顧客のニーズがそれに集中していると考えられますから、70%だとか80%だとか、とんでもない確率になっているものと思われます。

(これだと厳密には統計学ではなく、統計データと経験則をチャンポンしたものが統計的に見えているというだけですが、統計データを利用すれば悪い意味で有意義な営業ができる、という意味でお読みください)

トリックに使えそうな統計データは無数にある

念のため書いておきますが、ここでは「既婚か未婚か」という超単純な当て物を例に引きましたので、これを実際の現場でやっている占い師さんは少ないだろうと思います。

とはいえ自分の客層や鑑定の価格、メディアでどう取り上げられているかなど、統計的手法、もっと正確に言えば経験則的な学びも加えて、お客さんの心の中を読む方法は無数にあると言えるでしょう。

そのほかにも平均離婚率、子供の数の平均、不妊治療を受けるカップルの割合や年齢別の成功率、各都道府県の所得の中央値、似たようなデータはいろいろと転がっていますので、創意工夫であれこれアタリをつけたり、顧客をグイッと引きつけることができるだろうと思います。

例えば、現代ではカップルの1/7から1/10が不妊治療を受ける必要があるのだそうです。であれば、「これから結婚するのですが」と相談に来たカップルに、 片っ端から「病院に行ってください」とアドバイスすれば、そのうちの10-14%は「先生の鑑定が当たって、事前に問題を発見することができた」と占い師を尊敬するようになるでしょう。

こうなると、水子供養だなんだのオプション販売で客単価が跳ね上がり、「この先生は当たらないな」という客がリピートしなくなるマイナスを差し引いても、売上が大きくプラスになる可能性があります。

マーケティングの世界では統計学で人を占っている?

こういったコールドリーディングのテクニックを占い師が使うと途端に胡散臭くなりますが、マーケティングの世界では、人間の属性やデータから何かを導き出して、提案して、誘導するということが普通に行われています。もしかすると、占いは統計学となった時点で、もう占いではないのかもしれませんね。

科学の世界で行われた占いの検証実験

占星術師と科学者による二重盲検実験のイメージ(Shawn Carlson, 1985)

「占いが統計学である」という主張の真偽を、実際に科学的な手法で検証しようとした試みはいくつか存在します。ここでは代表的な 3 つの事例を紹介します。

Shawn Carlson による二重盲検実験(1985年)

1985年、アメリカの物理学者ショーン・カールソン(Shawn Carlson)は、西洋占星術師が出生時刻のデータから性格を正しく言い当てられるかを調べる大規模な二重盲検実験を行い、その結果を世界的権威の科学誌『Nature』に発表しました。

実験ではまず被験者に性格テスト(カリフォルニア人格検査)を受けてもらい、その結果を3通り用意します。占星術師は本人の出生チャートを渡されて、3つの性格結果の中から「本人のもの」を選ぶ、というシンプルな設計でした。もし占星術が統計的に有効であれば、偶然の1/3を超える正答率が期待できるはずです。

結果は、占星術師グループの正答率が約34%。偶然の33.3% とほぼ変わらない、統計学で言う有意差なしの結果でした。西洋占星術のコミュニティは実験設計に異議を唱えましたが、この論文は現在でも「科学的に占いを検証した古典的実験」として広く引用されています。

Michel Gauquelin の「マーズ・エフェクト」(1950〜70年代)

フランスの心理学者・統計学者ミシェル・ゴークラン(Michel Gauquelin)は、約2,000 人のスポーツ選手の出生データを集め、火星の位置と運動能力の相関を主張した「マーズ・エフェクト」で1960 年代に話題を呼びました。ある時期には「統計的に占星術を裏付ける証拠」として議論の俎上にのぼったこともあります。

しかし後続の追試研究ではこの効果は再現されず、統計処理に対する疑義や被験者選定バイアスの指摘を経て、現在では科学的な支持をほぼ失っています。ゴークラン自身も晩年には自分の主張の統計的根拠の弱さを認めており、「マーズ・エフェクト」は占いを統計的に検証しようとして挫折した代表的な事例として語り継がれています。

19 世紀のサーカス興行師 P.T. Barnum とバーナム効果を象徴するイラスト

Bertram Forer のバーナム効果(1948年)

心理学者バートラム・フォーラー(Bertram Forer)は1948年、学生にあらかじめ用意された「個人別の性格分析」を配り、その正確さを評価させる実験を行いました。学生は平均で5点満点中4.3点という高評価を与え、「驚くほど自分に当てはまる」と述べた人が多数でした。

ところが実は、学生全員に配られた分析は全く同一の、星占い雑誌からの切り貼りだったのです。この実験によって、人は抽象的かつ誰にでも当てはまる性格記述を、自分専用のものだと錯覚してしまう傾向が確認されました。この現象は「フォーラー効果」あるいは「バーナム効果」(19世紀のサーカス興行師 P.T. Barnumに由来)と呼ばれています。

占いの「当たった」という感覚の多くは、このバーナム効果で説明できるというのが、現在の心理学の標準的な見解です。統計データを集めなくても、抽象的で曖昧な表現を使うだけで「当たる」と感じさせることができる、というわけです。

現代の占いと統計学 — AI 時代の可能性

伝統占術家と AI ロボットが協調して生年月日データを分析するイメージ

機械学習は占いを本物の「統計学」にできるか

2020 年代に入り、深層学習を含む機械学習技術が大きく進歩しました。インターネット経由で数十万人規模の出生データやライフイベント記録を収集し、「この命式の人はこういう人生を辿りやすい」というパターンをAIが抽出する、という試みも散見されるようになりました。

理論的には、データ量・特徴量・計算能力が揃えば、占術が主張する因果関係(または相関関係)を統計的に検証することは可能です。しかし現場でこの統計学的検証を実装しようとすると、これまでに指摘してきた「占いを統計学として扱うことが難しい理由」同様、以下の3つの壁にぶつかります。

  • ライフイベントの定義が曖昧:「幸せ」「結婚運が良い」「健康」などを定量化する統一的な指標がない
  • 被験者選定バイアス:占いに興味を持ってデータを提供する人には、そもそも特定の傾向がある可能性
  • 反証の困難さ:占いの結果が外れた場合、「解釈が違う」「努力で変えた」と後付けで説明される

これらは前述のGauquelinが「マーズ・エフェクト」で、またCarlsonが占星術実験で直面した課題と本質的に同じものです。AIは計算の道具として有用ですが、占いが元々持つ「何を占うのか」「正解とは何か」「未知のなにかを提案できるか」という、根本的な定義の曖昧さまでは解決してくれません。

占い師として、統計学は完全に無意味か?

ここまで「占いは統計学ではない」と繰り返してきましたが、筆者自身は統計学の考え方が占い師の実務にも一定の価値をもたらすと考えています。実際、筆者は以下のような形で統計的思考を鑑定に取り入れています。

  • 相談内容の傾向分析:「30代女性の相談は恋愛と仕事が7割」など、自分の顧客層の統計を把握することで、初対面の方にも適切な話題の選択ができます
  • 命式の経験則データベース:過去の鑑定記録を蓄積して、「この組み合わせの方はこう動きがち」という傾向を体系化することができます(ただしサンプル数が少なく、統計学的に有意とは言えない点に留意してください)
  • 競馬や不動産で養った確率論的直感:筆者は馬主やギャンブラーとして、日々「期待値」「分散」「ケリー基準」について考えています(これらはカジノや株式、ポーカーの本を読むと比較的容易に理解できるでしょう)。これを占いの場で応用することで、「確率的に言えば、この選択は7割うまく行く」といった現実的な助言が可能になるかもしれません

要するに、統計学そのものは占いではないが、統計的思考は占い師の判断力を高めるツールになり得る、というのが筆者のスタンスです。「占い=統計学」は虚偽ですが、「占い師が統計学を学ぶことには意味がある」というのは正しいと思います。

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まとめ:占いは統計学ではないが未来のある研究分野

占いは統計学ではないが、ビッグデータを使うことで両者が近づく可能性はある。

長文になりましたが、占いは統計学ではなく、現時点では関係もないということをお伝えしてきました。また統計学を用いて、占いのようなコールドリーディングができることもご説明しました。

占いは統計学である、四柱推命や占星術は生年月日を使うから統計学である、という占い師は、嘘をついているか、統計について無知であるというのもご理解いただけたかと思います。

しかしながら、占いと統計学との関係を、真剣に考えている占い師さんもいます。昨今はインターネットで簡単にデータを集められ、R、Excel、AI、ローカルLLMなどで本格的な統計解析が可能になっているわけですから、これからが楽しみな分野だとも言えます。

昨今はAIの進歩が著しく、インターネット経由で生年月日やライフイベントのビッグデータをいずれかのデータソース(例えば全世界の人が学習オプトインをオンにして送り続けているであろうAIチャットの相談ログ)から蓄積して、天体や暦との関係を洗い出していくことも、いつかは可能になるでしょう。

占いは統計学ではなくアート

というわけで「占いは統計学」と言い張る占い師を見つけたら、ちょっと統計に対する見識が薄いか、もしくは本当に凄い統計学の素養があるか、どちらかだとお考えください。後者であるならば、学歴や著した論文を聞くくらいは失礼にあたらないと思います。

私自身はぶっちゃけ、占いは統計学ではなくアートだと思っています。だからこそ、そのお客様のためだけの、心に響く、本物のアドバイスができるのです。とはいえ一人の占い好きとして、統計学的手法やディープラーニングから出発した、本物の「統計学占い」が現れる日も楽しみにしています。

占いサロンチャンス 高円寺本店 — 本物の占い師だけが集まる店・ワンプライスで明朗会計

コメント

  1. まなみ より:

    占いは統計だってのは、占い師を否定する側のセリフだと思ってました。占い師が、統計だと主張するとは思わなかったです。

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